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光と赤いセロハンと

2018-10-19

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夜明け前、薄く濡れた歩道の上に、光が注ぎ出す。

予報は一日中、雲の中にあるはずの金曜日。走る車窓からは光が斜めに差し込んで、左の耳たぶだけが熱を帯びてくる。目の前に座る女子高校生は、陰をまとい、押し当てた赤いセロハンを懸命にすべらせ、わずかに唇を動かし続けている。膝の肌色に、光が写っては消えてを繰り返す。

そのまぶしさに思わず視線を外して、流れる街並みに焦点を合わせた。彼方の西の空は灰色に沈んだまま、天空のやさしげな水色に、どころどころ雲が白く帯を引いている。一駅ごとに増してくる光の束を背中に、列車が中目黒へとひた走る。

これなら明日は走れそうだ。

そんな思いを巡らせているうちに、女子校のある駅で扉が開いた。席を立つ彼女と入れ替わるようにして、違う制服に身を包んだ高校生が乗り込んできた。その娘の手にもまた、厚い参考書と一緒に赤いセロハンが握られてくる。うまくいけばいい、細い指先を見つめて、そうつぶやいた。
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九月もあと三日

2018-09-28

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濃く霧が立ちこめて、東の空に月のような太陽がぼんやりと浮かんでいる。夜気は壊されることもなく漂い、昨日の肌寒さを身体が思い出す。

少し遅れてやってきた各駅停車に腰を下ろし、文庫のページをいくらか繰っていると、やがてエッジの利いた光が車窓から差し込み始め、前に座るOLの髪を茶色に光らせていた。数日ぶりに見る青の欠片。貴重な晴れ間はひと駅ごとにふくらみ、流れる街並みが澄んでいく。そして、いくつか川を渡り、高層ビルが建ち並ぶ頃になるともう、空は染みひとつない青に満ちていた。

秋晴れの朝、九月もあと三日だ。

雨の記憶

2018-09-11

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思い出すのはいつも、レインウェアを着込むしょぼくれた姿。

ただのアスファルトに間口を開いた商店の、そのわずかな軒下に潜り込んでは、吹き込む雨に濡れないように背中を反らせながら、最初にジャケットに腕を伸ばしていく。裏地のナイロンメッシュが革ジャンの表面に引っかかっては吊れて、なかなか手首が出てこない。不自然なままに折れ曲がった両腕を、何とかまっすぐにしたら、次はブーツを脱いで素早くパンツに足を通していく。さっきから雨の端を吸い込んでいるデニムに、裏地のないビニール地が張り付いて、こちらも全く足が通らない。片足立ちのまま、パンツを両手でゆっくり引っ張り上げて、ようやく見えたつま先は、バランスを崩した上半身を支えようと、あっさり地面に落ちる。急いで引き上げた指先に、湿った綿の感触が伝わった。

原色のウェアを纏うのは、鉛色に沈む心。そのコントラストに風が雨をかぶせていく。素知らぬふりで店番をしていたお母さんにお辞儀をして2ストロークに跨がり、雨の流れるアスファルトへ蹴り出していく。ライトスモークのシールドに雨粒が音を立てて弾けた。乾いたLAサウンドのハミングにスロットルを合わせてやると、小刻みに揺れるリヤタイヤが高々と水しぶきを上げる。

覚えているのは、首筋から流れてくる雨のひんやりとした感触。いつしか夏は終わって、あの頃と同じ秋の雨につつまれていた。

2018 夏

2018-08-22

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「じゃあ、お先に」
「ほな、気ぃつけて」

どこまでも青い空の下、パーキングの焦げたアスファルトから、1台のレトロな4気筒が駆け出していく。肘を曲げたまま、広げた左手を海風になびかせる。両袖を断ち落とした革ジャンの、その背中が逆光の中、黒く小さくうごめき、つながる左ベントに向かい、肩から右へと落ちていった。

白い破線の先まで排気音を見送っていたもう一人の影が、シルバーメタリックの愛機の横に戻ってきた。SUZUKI GSX1100S。ドイツデザイナーの手による希代の名機は、カタナという別の名を持つ。煙草に火を点けるのを諦めてゆっくり空を仰ぐと、ミラーにかけたヘルメットに手を伸ばした。

空冷の並列4気筒は、オリジナルのマフラーから静かに音を吐き出しながら、さっきの彼とは反対の方向へと出て行った。富山県氷見市。海と立山の遠景に恵まれたここは、北陸能登半島の東の入り口になる。東と西のライダーがひととき走りを止めて、言葉を交わし、また離ればなれに走り出す。

空冷のデスモドロミックで能登を巡ったのは2005年の5月。それが最後のロングツーリングになった。丸いハンドル越しに二つの影を送りながら、ハイウェイを長い時間転がせる単車にまた少し、乗ってみたくなった。

rendezvous 4

2018-07-21

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<7/9の続き>
時間もそろそろ半分を過ぎた頃、ひときわ強く、腹に響く音が割って入ってきた。同じ4ストロークエンジンでも、プラス100ccとIBの腕で、エグゾーストはここまで暴力的になる。Sの字を倒したような下りから、コブとテーブルの続くコの字をした外周。2台の4ストロークを従えたYZ125が、最終コーナーのバンクへとまっすぐに高音を伸ばしていく。その左手を、CRF250Rがくるりと反転、加速を始める。そして、リヤタイヤが巻き上げる砂塵の中、もう一つの車影がためらいもなく突っ込んできた。

「ヤラレた」

居るはずのない、そう思っていたCRF150RⅡ。半分が過ぎて、疲れていたのは私の方。カレはまだ、気持ちを強く残していた。バンクの上で、立ち上がるその背中をただ見送り、一瞬遅れて、あわてた左の人差し指がクラッチレバーを軽く引く。リヤタイヤは思い切り空転し、立ちの強い車体が左に大きく流れた。右手でハンドルバーを引いてバランス、左のつま先がシフトペダルを掻き上げる。フルサイズの音はもう聞こえなくなって、また二人だけの時間が戻ってきた。攻守交代。今度は私が追う番だ。

<つづく>

プロフィール

ナノハナ274

Author:ナノハナ274
ただいまモトクロスに夢中!

最近のTEAMナノハナ

初のWOP、面白かった!
すでに次が楽しみっ!と(笑)。

<これからの予定>
10/20(土):MX408
10/27(土):MX408

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