色褪せぬ時

2018-02-19

Tag :

ありふれた白いガードレールが時折きつくアールを描いては、複雑な海岸線をたどっていく。そのうねるような曲線に合わせて右に左にと切り返しているうちに、海は視界の遙か下に、青く沈んでいった。突き破ってしまえば助からないだろう高さにまでアスファルトは駆け上がり、彼方に朝が眩しく浮かび上がる。

半島の西側を縫うワインディング、アスファルトに朝日はまだ届かないでいる。見下ろす凪いだ駿河湾にだけ光は落ちて、遠く沼津の街並みを照らしている。左から右に白い煌めきが横切るのは、南アルプスの稜線だろうか。そして、右カーブとともに開けた視界に、霊峰の伸びやかな肢体が艶やかに映り込む。

叶わぬ恋を誓った岬、黄金色に染まった大海。そして、盛りを終えた桜の木立。桜色のルーストを上げた走ったあの日からもう何十年も過ぎてしまった。希望と不安を勢いと装いとで覆い隠し、「路面をこすれ!」とばかりに大きく膝を突き出しては、シートにほとんど尻を着けないままの昔が、バックミラーのマシンに重なる。

アスファルトの真ん中に白い破線が出てきたところで、後ろのマシンが右から抜きに出てきた。4ストロークだった。車体を少しだけ左に寄せて前を譲ると、左手を大きく空に上げて走り去っていった。かすかに荒れた路面を今日は四輪で走る。色褪せない時間。ハンドルを握った両手に伝わる感触は、たしかにあの頃のままだった。
スポンサーサイト

温もりの朝

2018-02-15

Tag :

薄く雲の張った空に、ほんのり水色が透けて見える。ふらふらと浮かび上がった太陽は、その雲の向こうに大きくにじんで、アスファルトにぼんやりと影を走らせている。誘う春の気配に枯れ色の林はそよぎだし、つかの間、田園の眺めがやわらかく震えた。見るものすべてが霞み、おぼろげな輪郭に淡い陰影が揺れる。そして、息を大きく吸い込めば、温い空気に胸がいっぱいになる。足下にはいつしか菜の葉の緑が伸びていて、黄色い花の匂いもしてくるようだった。

光と陰と 5(完)

2018-02-07

Tag :

<2/5の続き>
よろめきながら斜面をたどるCRF150RⅡ。その細く乾いた軌跡をなぞり、RM85Lのリアタイヤが短くリップを蹴りつけ、光の中へと着地する。その光が、カレのすぐ後ろにまで濃く長い陰を映す。その背中には、軽やかに伸びる2ストロークの排気音が間違いなくぶつかっているはずだ。

くの字を倒したようなすり鉢に、4ストロークの野太い破裂音がまき散らされて、西からの陽射しを揺らめかせる。その勢いが少し翳ったところで、ジャージの背の「148」が今度は光の中にまぶしく浮かび上がった。

そして、追いすがるように少しだけ高く跳び上がったRMが、CRFの着地する先のところまで、陰を引いてみせる。ほとんど並んだ二台のマシン。眩い褐色に陰が蠢き、インとアウトに分かれて最終コーナーをたどっていく。

MOTO-X981の午後に、共鳴しないエグゾーストノートが響きあう。ここでこうして走れる喜びを、カレといつまでも。

光と陰と 4

2018-02-05

Tag :

<2017/12/15の続き>
得意なところがまるで違う。

ここで詰まって、ここで離されて。それはあっちもわかっている。逆光に消えてなくなった直線が、右カーブの手前になっていきなり姿を映す。走り慣れた感覚だけで走るRMが、ここで一気に差を詰めて、左、右と切り返す。シングルジャンプを2台続けて高く跳ばされて、下りながら近づく黒い左ターンに身構える。やわらかく減速を終えて、斜めに傾げたCRFが流れるように左バンクを抜けていき、減速しすぎてスロットルも開けられないRMは、またコーナー一つだけ置いていかれる。

でも、この先、最終コーナーまでは、長い直線とジャンプばかり。カレがスライドを披露できる左コーナーは・・・一つもない。

<つづく>

54×54の魅惑 7(完)

2018-02-03

Tag :

<1/7の続き>
左右のステップに立ち上がり、そのまま腰から上をハンドルバーへと折り曲げて、暗色に沈んだ直線を駆け抜ける。そして85ccマシンなら間違いなく拾っては弾かれる凸凹を、小さなピッチングモーションだけでやり過ごす。気を良くしてスタンディングのまま、黒く光ったバンクの縁をたどれば、19インチのリアタイヤが緩んだS字の黒土を真後ろへと蹴り上げる。

車体がまっすぐに立つまで待っていると、ステップアップの斜面がもう目の前にある。RMだと半クラッチで覚悟を決めないと、二つ目のコブをきれいに跳び越せない距離。でも、今日は違う。40ccのアドバンテージと長い足まわりは、右手をひねり直すだけでふわりと地面を離れ、見えなかった斜面へと静かに落ちていく。2ストローク125ccを感じる瞬間だ。

YAMAHAにも数多く乗ってきたけれど・・・強い印象が残っているのは、一台だけ。学生の頃に、友人から譲り受けたRZ250だけが今も私の一部を形作っている。多くのことを教えてもらった水冷2ストローク250ccは、ボア×ストロークが54mm×54mmのスクエアストロークのシリンダを二つ抱えていた。その54×54が作り出す123ccが2ストロークエンジンの理想形であり、ゆえに2気筒で250cc、4気筒でWGPマシンの500ccが出来上がる具合。そんなつまらない話を、今でもよく覚えている。

バックストレートを短く下り上れば、シングルジャンプの飛び出しが迫ってくる。MOTO-X981でもっとも高度の出るシングルジャンプを、排気量が増えたままにひときわ高く跳び上がる。ほんの少しだけ遠くに落ちていける高さからは、今まで見たことのない林の向こうが覗けるようだった。54×54の魅惑にひととき包まれて、最後の右ターンに呑まれていく。できれば黄色のオリジナルが欲しかったけれど・・・いいマシンに巡り会えた。

プロフィール

ナノハナ274

Author:ナノハナ274
ただいまモトクロスに夢中!

最近のTEAMナノハナ

もっとも苦手な如月に突入!
早く暖かくならないかなぁ...(笑)。

<これからの予定>
2/24(土):MOTO-X981

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ご意見・ご感想はこちらまで

名前:
メール:
件名:
本文: