見覚えのある、その背中に。 5

2017-10-17

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<10/15の続き>
西からの風に抗うように、ryoの右足がキックペダルを踏み下ろす。カチャカチャと数回、ペダルの戻る音だけが響いた後に、4ストローク150ccエンジンはいきなり目を覚ました。風に弾ける咆哮。そして、チョークノブを引いたまま、ゆっくりとスロットルを回しては閉じるーー濁る排気音が伸びのある連続した旋律になるまで、ていねいにそれを繰り返してゆく。

一度だけこちらを振り返ると、クラッチレバーを放してコースの入口、第1コーナーの立ち上がりへとCRFを走らせるryo。開けたその右隣にRMが並ぶのを待ってからひとつうなずくと、目の前に広がる大きなバンクに向かい、ゆっくり坂を下り始める。くぐもったエグゾーストノートを引きずり小さくなるその後ろ姿を、青いゴーグルレンズがしばらく見送っていた。

<つづく>
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見覚えのある、その背中に。 4

2017-10-15

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大袈裟な手術のおかげで、ryoの左の肩はもう、簡単には外れなくなった。ただ、何もしていない右肩には、今も脱臼癖が残ったまま。だから今日もこうして、肩口をくるんだサポーターに、ベルクロテープを螺旋に巻き付けてやらないといけない。思えばこの「儀式」ももう、半年以上も前にしてやったきりになっていた。右腕を何度か後ろに引いて、動きが止まることを確認してから、メッシュのモトクロスジャージに袖を通すryo。先に着替えをすませると、すぐにCRF150RⅡのシートへとまたがり、キックペダルを引き出した。

<つづく>

見覚えのある、その背中に。 3

2017-10-14

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「帰りにこれ、ポストに入れていってね」と手渡された駐車証には、大きく数字が書いてあった。それをダッシュボードに放って、どこまで行けば、どこで停めたらいいのかもよくわからないまま、ゆっくりとBongoを前へ走らせる。

日曜日の昨日、今日のように広がった青空に多くのライダーが集まり、重たい砂埃を撒き上げていたのかもしれない。今はそれが信じられないくらい静かな朝、時折ジャンボ旅客機が滑空するだけで、他に聞こえるのは風の音だけ。邪魔するものは何もない。「今日は貸し切りかもね」、と晴れた月曜日の朝に、ryoが微笑んだ。

<つづく>

見覚えのある、その背中に。 2

2017-10-13

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フロントウインドウ越しに、ただ景色を眺めているだけの二人に後ろの荷室から、くぅんとネロが鼻を鳴らし、「降ろしてくれよ」とねだってきた。一瞬止まった時間が再び動き出して、助手席から降りたryoが受付小屋、「小屋」と言っては失礼なくらいに立派な三角屋根の建物に向かって、急いで駆けていった。

「昨日はねぇ、ずいぶんいっぱい居たんだよ」

ryoと連れ立つように外に出てきた初老の男性が、昨日の空を懐かしむように、目を細めながら教えてくれた。海峡を渡っても水曜日の雨予報は変わらなかった。断られるのを承知で今朝、電話をし続けたら・・・快く予約を変更してくれた。電話の主が、この穏やかな男性らしい。物腰がそのまま人柄のような人だった。

そして「昨日の荒れたままで申し訳ないけど」と、それは本当に申し訳なさそうに、関東からわざわざ走りにやってきた連中を思いやる。

<つづく>

見覚えのある、その背中に。

2017-10-12

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遮るもののない空が、ただ青く突き抜けている。その下で灰色の火山灰が、緩やかな起伏を彼方にのばして、緑の縁へと見えなくなっていく。どこからコースが始まり、どこまでがパドックなのか。いったいここが目指したモトクロス場なのか、それさえわからなくなるほど開けた大地には、千歳のつめたい風が大きく舞っている。入口に佇んだBongoはあまりに小さく、その中に積まれた二台のモトクロッサーも、その乗り手の二人も、まるで小さかった。関東から丸一日かけてたどり着いたここは、そのまま二人を呑み込んでしまいそうな、そんな気配がしていた。

<つづく>

プロフィール

ナノハナ274

Author:ナノハナ274
ただいまモトクロスに熱中!

最近のTEAMナノハナ

秋の夜長を楽しむ前に、秋の長雨の時季になってしまった...。

<これからの予定>
10/21(土):MX408!?
10/29(日):MCFAJ!

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