気分は上々 8(完)

2018-05-18

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<4/11の続き>
弱気な背中はうまく消せているだろうか。

シートに腰を残したまま、右肩から上半身を、カーブの内側に落とし込む。気持ちが悪くなるほどのリーンイン。ロードバイクに乗るときの影が出始めて・・・背中に焦りがにじんでいないことを祈りながら、坂を駆け上がる。光を遮る林をくり抜いた、左の切り返し。その頂点を少し過ぎたところで、マーシャル姿の元IAライダーが、コースに向かって腕を回している。その足下、アウトいっぱいにはらんだCRFが、全開で坂を駆け落ちる。「この先、詰まるとしたら・・・」、心配事を蹴散らすように、左のつま先がシフトペダルに触れることなく、そのままフープスへと入っていく。4ストロークエンジンが吹けきり、むせぶ。気が遠くなるほどの時間を使ってコブを抜け切ると、全開で作ったわずかばかりの貯金が、続く短い直線に向き合うまでにすっかり無くなっていた。

あと1/3周。

カーブにもジャンプにもセクションにも、どこにも好きなところは残っていない。インフィールドの短い直線からただ右へ、直角に折れる。一瞬、ラインに迷って、CRF150RⅡの重たい車体が、すぐ目の前のテーブルトップの斜面の外へ、転げ落ちそうになる。ヘルメットごと視線を本来のラインへ戻すと、遅れてマシンも戻ってきた。ひとつスロットルをつないで、二つ目のテーブルトップを思い切って跳んでみる。ランディングの先の平らな砂に勢い落ちたCRF。ハンドルバーがアウトバンクにぶつかりそうになる。力の入らない左脚をあきらめ、右腕一本で車体を寝かせて、斜面に向かい、その手でスロットルを引き絞る。湿った粘土が、ハーフパイプのように右から左、そしてまた右へとうねるようにのぼり下る。もっとも苦手なセクションに、最後の破裂音がこだまする。

すぐ後ろにいたはずの音はもう、耳に届かなかった。
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夏日のデュオ 3

2018-05-02

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<4/27の続き>
カン高い排気音を細くまき散らして、KX85が弾んでいく。

走り出すまで「うまく走れない」と涙を流していたはずなのに・・・先生のCRF150RⅡを交わしたのは、ほとんど走るマシンのいない、きれいなインサイドだった。先生よりも小さな背中を先生と同じように丸めて、シートのやや後ろに腰を落とすと、教え子が前に出た。YZ125のフロントがフープスに正対する頃にはもう、2台はつながるようにして第4コーナーを抜けていた。

このまま近づいてくると思われたCRF150RⅡ。でも、先生の今日は、まだ終わらなかった。

<つづく>

夏日のデュオ 2

2018-04-27

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<4/25の続き>
背中の視線に力の入らなくなった右手を諦め、左の人差し指と中指を引いては、落ち込んだ2ストローク125ccを呼び覚ます。瞬間、遅れた上半身がリアサスペンションを押し込み、傾いた路面からフロントタイヤがわずかに浮き上がる。第1コーナーには濃い褐色の埃が漂い、かすかにオイルの匂いがした。

ブレーキレバーだけで車体を右コーナーの内側に落とし込むと、すぐに半クラッチを当てて斜面を跳び上がる。着地したYZを一度外に振って、今度は左に180°のターン。第2コーナーのインへと視線をすべらせていく。張り出した木の根が左の肘をかすめ、テーブルトップに隠れた第3コーナーから、2つの音色がぶつかり濁って耳に届いた。

フープスの最初のコブを飛び出したのは、4ストロークじゃなかった。

<つづく>

夏日のデュオ

2018-04-25

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幼い教え子を引き連れて、背中の#148が土煙に飲まれていく。

カレの駆るホンダに、真っ赤なモトクロスウェアがよく合っている。真後ろには緑色の2ストロークが迫り、大きく弧を描いて、そのラインをなぞっていく。スモールホイールの巻き上げる浮き砂が、西へと傾いた太陽に照らされて、バンクの縁はどこかへ消えてなくなってしまった。迫るはずの右コーナーがどこから始まるのかさえ、もうわからない。

ステップに立ち上がったまま、YZ125のフロントブレーキレバーをゆっくりと締め上げ、煙ったゴーグルレンズで瞬きをすると・・・ノーズダイブしたフロントフォークに視界が激しく弾んで、バンクの縁が薄く浮かび上がった。2台から遅れてようやく晴れた暗がりに佇む影ひとつ。杉の木立で2台を追いかけるスマホのレンズと、不意に目が合った。

<つづく>

気分は上々 7

2018-04-11

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<4/5の続き>
受付のあるコンテナの前、フィニッシュラインの引かれたテーブルトップに、「L1」と描かれたボードが翻った。オレンジ色のジャケット、mori-sanの右腕が、大きく大きく回される。その視線に、VFX-Wのバイザーを小さく上下させて、背中で音を聞く。聞こえてくる排気音も、ひときわ大きくなった。

コーナーのインとインとをつないだ最短距離から外れて、CRFがホームストレートに大きなS字を描いて走る。歴戦の使い手は、たとえ練習であっても、そんな遠回りは走らない。バンクの頂点を得意げに切り返す足下で、右腕をきれいに折り畳むようにしてもう一つCRFが、第1コーナーをえぐっていく。

「追い上げられて、自分を見失ってはいけない」

バンクを蹴って下りながら、ひとつ大きく息を吐き出し、3速、4速とシフトペダルを掻き上げる。開きっぱなしのスロットルにシフトドラムがうまく噛み合わず、4速になり損ねた4ストローク150ccがまた、けたたましくオーバーレヴする。その爆ぜる音をまとい408コーナーを抜けるゴーグルレンズの端、映る師匠のCRFをわざと見ないようにした。

<つづく>

プロフィール

ナノハナ274

Author:ナノハナ274
ただいまモトクロスに夢中!

最近のTEAMナノハナ

自分、体調不良から復活なるか!?

<これからの予定>
5/20(日):MOTO-X981
5/26(土):軽井沢MP

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