冬空の下に集いし 4

2017-02-23

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彼の青いYZ125をその気にさせたマシンが、土埃の収まった視界の先に小さく映り込む。林の陰を横切るようにして走るのは、#113を纏うCRF150R-Ⅱ。ざりままのマシンだ。フルコースを楽しめるようになったMOTO-X981を、その日いちばん楽しんでいたのは、彼女だったかもしれない。

大量に撒かれた石灰と、腕利きの居ない午後。刻まれるワダチは何とか走れる深さ。ただ、みじん切りにされてもピーマンを食べられないワタシには、浅かろうが何しようが、嫌いなものに変わりはない。解禁されたばかりの黒く続いたいくつかのコーナーから逃げるようにその手前、乾いた陽向で向きを変え、ステップアップからバックストレートへRMが駆け上がる。

<つづく>

冬空の下に集いし 3

2017-02-22

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「ああ、上に上がるジャンプねー。やっぱり怖いよなぁ」

YouTubeにあがった動画を見るなり、事も無げにそう言われたと、大きな背中が笑い出す。そうだ、地上から高く跳び上がるのは、それだけで誰でも怖いんだ。それを頭ごなしに「いけるだろ」とは、よく言えたもんだと、また笑う。見上げる上背とは裏腹な、こうした普通な感覚に、その笑みはよく映える。それでも今日は・・・もう跳ぶしかない。きっと乾いた口元から荒く息を吐き、左コーナーのアウトを静かに大きく回っていく。

少し丸めた背中から細い腕がゆるりとハンドルバーに添えられている。眺める後ろ姿は、うまくチカラが抜けているようにも見える。そして、ためらうことなくYZ125が斜面を這い、小さくうめいたかと思ったら、フロントタイヤが一気にリップを跳び出した。一瞬、音が消えてなくなり、ステップの上、青い背中がさらに濃い青へと伸び上がる。きれいな放物線がテーブルトップの向こうに消え、リヤタイヤはひとつの埃も立てなかった。

<つづく>

冬空の下に集いし 2

2017-02-21

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<2/19の続き>
「みんな跳べてんだから、いけるだろ」

褐色の向こうに、青い車影が霞む。同じ2ストローク、40ccほど上乗せされた排気量が、ひと回り太ったエグゾーストを白煙とともに弾き出す。あれから、ちょうど一週間。受付のsaitoさんにカミさんの携帯番号を伝え、息子にはLINEを残し、ざりままの軌跡を何度も目で追っては、パドックでハンドルバーの角度を細かく調整する。自分の息子のCRF150RⅡにぶつけた言葉を思い出しながら、フープスの上、自分自身に言い聞かせる。「手前のテーブルは焦らず越えて、ゆっくりていねいに」、そして「跳ぶ、跳べる」と。

<つづく>

冬空の下に集いし

2017-02-19

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ビッグテーブルを跳び越え、舞う砂塵のはるか先を追いかける。固く乾いた感触がハンドルバーを伝い、開いた両腕から握力が抜けていく。バックストレートに沿って走る、緩やかな直線。2ストローク85ccが5速に入ってすぐ、軽く上りながらの左カーブが待っている。フロントのブレーキレバーに指を残したまま一気にシフトを3つ落とすはずが、レバーを引くタイミングも握るチカラも、土煙に巻かれて、まるで見えてこない。かすかに沈んだフロントフォークに気づき、クラッチレバーも握らず、立て続けにシフトペダルを3回踏みつける。リヤタイヤがロックして、ようやくRMが減速を始めた。

<つづく>

エンスト、水浴び、前回り 5(完)

2017-02-18

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乾いているはずのものが濡れていく、そのやるせなさ。

いつの頃からか、その感触を楽しむココロも失くしていた。雨上がりの河川敷、道幅いっぱいに広がった水たまりに向かって嬉々としていたのも、遠い昔のことに感じる。雨の日のレースも走らなくなった今では、高圧洗車機でマシンの泥を落とすときですら、足下が濡れるのを嫌がる始末。右脚から半身を水に浸けながら、いったい楽しく走れているのか、だんだんわからなくなっていた。

そんな思いを断ち切るように、泥水に片足を突っ込んで、アップサイドダウンのままのRMを押し上げてくれたのは・・・ワダチを刻んだ一人だった。迷うことなく走り寄ってくれた派手なウェアに「ありがとう」と短く言葉を伝え、泥にまみれた右手を、黒土がたっぷり塗られたグリップに添えて、シートに跨がる。モトパンから染み出た褐色が冷たくサイドカバーを伝い、路面に垂れて落ちる。

このすぐ後に、この同じコーナーでもう一度、今度は派手に前転することになるとは・・・サイレンサーから真っ白な煙が消えてなくなるまで、十分に空吹かしをして出て行くワタシに、誰も教えてはくれなかった。
そして、今度は一人マシンを起こしてパドックに帰ると、思うようにいかないもどかしさを、もう笑うしかない大人がもうひとり、そのRMを待ってくれていた。

杉林に陰る午後のパドック。二人の声は風に乗り、空の青へ溶けていった。

プロフィール

ナノハナ274

Author:ナノハナ274
ただいまモトクロスに熱中!

最近のTEAMナノハナ

だいぶジャンプも跳べるようになって・・・あとはワダチかフープスか!

<これからの予定>
3/4(土):MOTO-X981
3/11(土):MOTO-X981
3/18(土):MOTO-X981
3/25(土):MX408

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