長い日曜日 6(完)

2017-10-11

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午前十時

NEXCOが思いついた新しいサービスのおかけで「一時退出」を許されて、どうにか腹を満たすことのできたBongoが十和田インターから再び、高速の本線へと戻っていく。それまで我慢していた右足は解かれて、失った時間をたぐり寄せようと追越車線を駆け抜ける。景色は急いで流れていって、見渡す限りに広がるリンゴの木々の彼方には、岩木山がおだやかに霞んでいた。

午前十一時

人に話せる速度まで十分に減速してから、本州最北の一般国道に合流する。港町へ。昔とは逆からたどる瞳にはただ、初めてのあの真夏の熱も映ってはこないし、ねぶた祭の賑わいも記憶の欠片すら見つけられない。あの頃と同じものがあるとすれば、それは2ストロークのマシンに乗っていることぐらい。もう誰もあの頃のように、単車で後を駆けてくることはない。

「青森にもベイブリッジができたんだよ」、青森出身で同じ職場だったいとちゃんに教えてもらった橋が、港の端に大きな弧を渡している。不二家のぺこちゃんにそっくりだった懐かしい同僚の顔を思い出してすぐ、広いだけの国道をナビゲーションの声に言われるまま、左へと折れていく。ひとつ陸橋を渡るとようやく、「青函フェリー」の看板を掲げる灰色のビルが見えてきた。

高速道路を使い、ほとんど半日を走りきってなお届かないところにひとり、ryoは待っている。

長い日曜日 5

2017-10-10

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<10/7の続き>
午前九時

初めて終点まで走る東北縦貫は、岩手から青森に入るものとばかり思っていた。それが十和田湖の南を西に秋田へ入り、そこから青森に迂回しながら抜けていく。安代で分け入った道は、やがて山を越えて蛇行を繰り返す。ほどなくやってきた鹿角八幡平、その先にある花輪PAは、keiの生まれ故郷だった。

「民家は数えるほどしかない寂しいところ」と話していたはずなのに、高速に交差して走る道には、街並みの眺めが山裾に向かってずっと続いていた。深い山の緑が眩く光り、その際を川が流れて小さな田圃に稲穂が揺れている。ただ、今は、それらをまとめて瞳の奥にしまうだけで通り過ぎなければいけなかった。

せっかくの景色にも、最後の給油のチャンスを逃して気はそぞろ。高速を降りるまで、まだ70kmはある。インパネの中、ガソリンの残りが少ないことを知らせる警告灯が、ずいぶん前から橙色に光ったままになった。

<つづく>

ばくだん

2017-10-08

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タクシードライバーが教えてくれた割烹の店は、駅前の華やかなネオンから少し離れて、古い寺の陰にやわらかな色を漂わせていた。表通りからはまったく見えない、言われたとおり「ちょっとわかりにくいところ」にあったけれど、近づく暖簾をくぐる前から笑い声が、灯りとともに外へとあふれ出ていた。ゆっくりと格子戸を引き半身を中に入れるとすぐ、眼鏡をかけた若い仲居さんと目が合った。右の人差し指と中指を立て「二人」と告げると、「カウンターでよろしければ」と目配せされる。見れば真ん中に席の空いたカウンター越し、大将と板長が忙しなく手を動かしていた。

<つづく>

長い日曜日 4

2017-10-07

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午前六時

朝もやが白く掃かれて、遠くにガスステーションの暖色が霞んでいる。何処にいるのか、はっきりするまでずいぶん時間がかかってから、鼻を鳴らずネロに手を伸ばした。夜が明けても体は重たいまま、シートに崩した上半身を捻るだけでまた、瞼が閉じていく。そのまどろみを蹴飛ばすようにスマホの電子音が、車内に鳴り響いた。ここまで横になってしまっては・・・少し寝過ぎた。

午前七時

陽が昇り、すっかり朝に照らされた北の山の端はもう、秋の気配を漂わせていた。ナナカマドが真っ赤な実を付け路肩に並んで走り、落葉樹の森は薄黄色の枝葉に光を宿し揺れている。右の頬だけが陽射しに当てられ、また頭がぼやけてきた。ネロはただ、遠くの秋に目をやっている。

午前八時

夜が明けるその前に、再び本線へと戻るはずだったのに・・・時間を取り戻すには、いかにもBongoは重たく非力だ。アクセルペダルを踏み込み追越車線に出ていっても、すぐに後ろに張り付かれては左に押し戻される。気づけば岩手山SAを通り過ぎ、安代のジャンクションに向かっていた。

<つづく>

長い日曜日 3

2017-10-06

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午前四時

郡山の出口が、いくつもの妖しいヒカリに彩られている。高速のインターに乱立するのは、男にとって都合のいい理由があると、どこかで聞いたことがある。事の真偽は別にしても、そのきらめきは確かに色情を煽る。ただ、問題はその後。酔ったあげくの行きずりなら、気まずい雰囲気の別人を明くる朝、枕の横に眺めることになる。

それは、汚れのない光に照らされて、間抜けな色を晒した建物と似ていたかも知れない。深い眠りにつく二人の朝を思いながら、目指す仙台まで起きているだけの自信が、夜陰に薄れていった。じっと動かず、窓の外ばかりを眺めていたネロも、いつしかシートに丸まっている。次のSAまであと2kmの看板が、狭まる視界に映り込んだ。

<つづく>

プロフィール

ナノハナ274

Author:ナノハナ274
ただいまモトクロスに熱中!

最近のTEAMナノハナ

フルサイズ、なかなかにデカくて、何かと大変だ。

<これからの予定>
11/23(木):MOTO-X981

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