晩春の候 6(完)

2017-04-22

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あとは疲れの浮き出たKAWASAKIの背中を、後ろに追いやるだけ。テーブルトップの斜面を下りきって、今度はワタシが、KX250Fのイン側にマシンをすべり込ませる。小さな車体を、もう縁に乗り上げるしかないくらいに寄せながら右に向きを変えて、フープスへは先に入っていけるはずだったのに・・・アウトを回っていた4ストロークが、その企みを砕いた。

ゆるやかな緑の弧線が途中で、まっすぐワタシの目の前を塞ぐように切れ込んできた。ぶつかるかブレーキレバーを引くか。迷うこともなく引き寄せたレバーがフロントフォークを縮めて、ハンドルバーへつんのめったカラダがリヤタイヤを浮き上がらせる。フロントタイヤを掠めて抜けるヨシムラのサイレンサーに、2ストロークが大人しくなった。

コーナーに独り残され、弾みながら小さくなる背中をただ見送る。エンジンと一緒に張りつめたものもぷつり途切れて、右腕が急に重たくなった。そして3台は散り散りに、1台ずつ最終コーナーから消えていく。戻ってきたパドック、気づけば日向にトランポの姿はなく、日陰を求めて、いつもとは反対側に小さな塊りができていた。噴き出す汗に当たる風はもう、春を過ぎていた。

晩春の候 5

2017-04-21

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<4/19の続き>
南の空高くに浮かぶ太陽。陽射しにシルエットだけのKX250Fが、いつまでも土煙を引きずるから、コーナーは霞んで、息苦しくなる。唇をすぼめるようにしてひとつ息を吐き、砂と一緒に温い風を飲み込んだ。それでも、一周ごとに近づく砂塵に勇気をもらい、固く膨れ上がった右手を捻って前を追う。そして、太陽を背にバックストレートを続いて加速、最終コーナーを3台が並ぶように立ち上がると・・・真後ろに付けていたRM-Z250が、先にしくじった。

第1コーナー、アウトの縁をKX250Fがゆったりと回り始める。車体は目の前。その鼻先を掠めてやろうと、無理矢理にハンドルを曲げて、下りながらの右カーブの真ん中あたりにフロントタイヤをねじり込む。その、さらに内側を狙ったRM-Z250の黄色いフロントフェンダーが、ハンドルバーの真横、ゴーグルレンズの右端に映った。すぐにテーブルトップの斜面を登る2ストローク、半クラッチに合わせて伸びた排気音にしかし、ヨシムラの咆哮は届かなかった。

一本ラインの第2コーナーを抜けて、もうひとつテーブルを跳び上がると、キックペダルを踏みつけるTHORのウエアが、右コーナーの真ん中に張り付いたままでいた。

<つづく>

R.I.P.

2017-04-20

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HONDA嫌いで袈裟まで嫌いなワタシは、スペンサーもガードナーもドゥーハンも・・・誰も彼も最後まで、好きにはなれなかった。往年の片山敬済でさえ、気持ちはそう変わらなかった。学校を卒業して社会に出てからもロードレースへの熱は冷めないまま、2ストローク500cc4気筒がすべての頂点にあると信じては、ケビン・シュワンツの一か八かの走りに憧れ、HONDAを駆逐する姿に手を叩き歓喜していた。

いつしか「六強」と言われた時代が過ぎ、2ストローク最強伝説が崩れかけた頃、にわかに速い500ccライダーが現れた。ポケバイあがりの名は、加藤大治郎。世界を狙えるただ一人の日本人は、HONDAを駆り、「大ちゃん」と皆に愛されていた。エースライダーには排気量で勝る4ストロークのモンスターマシンが優遇される、2ストローク終焉の時代に、孤高のライディングでNSR500をいくども表彰台に上らせた彼は、茶髪に幼い笑顔がよく似合っていた。

実績が実力に追いつき、ようやく4ストロークマシンのシートを確保した2003年、ホームグラウンドの鈴鹿シケインからドクターヘリで移送され、そのまま帰らぬ人となってしまった。モトクロスを始めたワタシは、74に2を付けて、274でレースを走るようになった。「大ちゃん」にあやかるように。HONDA乗りなのに大好きだったGPライダーは、その年の4月20日、永遠の眠りについた。

晩春の候 4

2017-04-19

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前を行くKAWASAKIと、後ろを走るSUZUKI。2台の250ccマシンには、揃いのヨシムラがおごられている。その弾ける音色に挟まれたまま、午後の周回を重ねていく。昼休みまでは調子よくフロントタイヤをコブにぶつけながら駆けたフープスも、肩甲骨に重たく響くようになってきた。ビッグテーブルを越えて、インフィールドの直線からクランクを抜けると、まだ枝に淡い春色を残した桜木から、小さな花びらがはらはらと舞い落ちる。

半月ぶりのMOTO-X981は、もう、春の盛りを過ぎようとしていた。

<つづく>

晩春の候 3

2017-04-18

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午後の一本目は決まって、走るマシンもにぎやかになる。最終コーナーを立ち上がる、いくつものフルサイズマシン。その隙間を見つけ出して、土煙の中に走り出す。2速に入れたまま右手を捻れば、わずかな動きに車体が反り返るように跳ねて、背中が後ろに置いていかれる。第1コーナーの入り口まで、スロットルを開けては閉じてを短く繰り返す。そのたびに持ち上がったフロントタイヤがすとんと落ちて、固い路面をグリップに伝えてくる。

<つづく>

プロフィール

ナノハナ274

Author:ナノハナ274
ただいまモトクロスに熱中!

最近のTEAMナノハナ

炎の9連休も遊びまくり (^O^)v

<これからの予定>
4/29(土):MOTO-X981
5/1(月):MOTO-X981
5/2(火):MOTO-X981
5/3(水):谷田部

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