Doctor Doctor

2018-05-31

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夕べ遅くの枕元から目が覚めるまで、そしてこうして地下鉄の満員に揺られながら、ずっと同じフレーズを飽きるまで聴き続けるのは、洋楽を始めて知った頃から変わらない。そんな変わった癖のまま、こんなに年を食ってしまった。窓に移った自分は、あの頃着るまいと思っていたスーツを羽織り、黙り続けて黒い壁を見つめている。

スタジオテイクのイントロは、インストゥルメンタルが追加されて少しだけ長くなって、オーディアンスの心を昂ぶらせる。UFO時代のオリジナルからは、もう44年。当世風にアレンジされて少しだけ若返っても、マイナーコード基調の傑作の、その主旋律が褪せることはない。GibsonのフライングVが欲しいと思うのは酔狂が過ぎるか。

あれから・・・

2018-05-24

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「ネロちゃんは元気?」

旧いMX408をよく知る顔が二つ、目の前に並んで、犬を連れた一人が、そう話しかけてきた。いつもは成田にあるコースで走っているというカレは、相変わらずスズキのフルサイズに跨がり、遠い記憶に目を細める。

「コイツ、新型なんだよね」

足下にまとわりつきながら、細かく尻尾を動かす二台目ならぬ二代目。先代は、17年以上生きて、大往生だったとゆるめた口元で教えてくれた。そういえばもう何年も会っていなかった。

しばらく話し込んでいると、思い出したように小さくうなり声を上げて、いきなり吠えられる。名前を聞き忘れたコイツの人見知りは、先代譲りらしい。

「もう10年ぐらい?まだかな?」

ナノハナと名乗り始めて、MX408にも通うようになって、コースで話のできる人が増えてきた頃。MCFAJのレース前日に走りに行くことが、ナノハナの一大イベントだった頃。そんなレース前の練習日に、ネロはコースに捨てられていた。それから我が家に来て・・・もう8年になる。

「元気ですよ、連れてくれば良かったな」

そう言って、マシンを降ろしたボンゴへと戻っていく。五月晴れの日曜日。乾いた北風が強く足下をさらい、薄く褐色の影が立ちこめる。今日のマシンは、そのナノハナ色。あの頃と同じ”片シュラウド”のままのRM85Lが、陽射しに負けない黄色で佇んでいる。

<つづく>

気分は上々 8(完)

2018-05-18

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<4/11の続き>
弱気な背中はうまく消せているだろうか。

シートに腰を残したまま、右肩から上半身を、カーブの内側に落とし込む。気持ちが悪くなるほどのリーンイン。ロードバイクに乗るときの影が出始めて・・・背中に焦りがにじんでいないことを祈りながら、坂を駆け上がる。光を遮る林をくり抜いた、左の切り返し。その頂点を少し過ぎたところで、マーシャル姿の元IAライダーが、コースに向かって腕を回している。その足下、アウトいっぱいにはらんだCRFが、全開で坂を駆け落ちる。「この先、詰まるとしたら・・・」、心配事を蹴散らすように、左のつま先がシフトペダルに触れることなく、そのままフープスへと入っていく。4ストロークエンジンが吹けきり、むせぶ。気が遠くなるほどの時間を使ってコブを抜け切ると、全開で作ったわずかばかりの貯金が、続く短い直線に向き合うまでにすっかり無くなっていた。

あと1/3周。

カーブにもジャンプにもセクションにも、どこにも好きなところは残っていない。インフィールドの短い直線からただ右へ、直角に折れる。一瞬、ラインに迷って、CRF150RⅡの重たい車体が、すぐ目の前のテーブルトップの斜面の外へ、転げ落ちそうになる。ヘルメットごと視線を本来のラインへ戻すと、遅れてマシンも戻ってきた。ひとつスロットルをつないで、二つ目のテーブルトップを思い切って跳んでみる。ランディングの先の平らな砂に勢い落ちたCRF。ハンドルバーがアウトバンクにぶつかりそうになる。力の入らない左脚をあきらめ、右腕一本で車体を寝かせて、斜面に向かい、その手でスロットルを引き絞る。湿った粘土が、ハーフパイプのように右から左、そしてまた右へとうねるようにのぼり下る。もっとも苦手なセクションに、最後の破裂音がこだまする。

すぐ後ろにいたはずの音はもう、耳に届かなかった。

長い休みのその後で

2018-05-07

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都心に向かう地下鉄の、長い車両の真ん中に腰を下ろす。読みかけの文庫本に挟んだしおりを手にページを開く。短編の連作は直木賞を穫った作品で、ちょうど幕の切り替わるところだった。ゆっくりとページを繰り、話が進むごとに席は埋まっていき、吊革につかまる人と人の間にもう一列、人が並び始める。空調が冷房に切り替わる頃、電車は荒川を越えて、しばらく走って地下へと潜っていった。ヘッドホンから流れるKISSに鼻を鳴らし、ふと視線を上げると、白いロングプリーツが目の前に揺れていた。

夏日のデュオ 3

2018-05-02

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<4/27の続き>
カン高い排気音を細くまき散らして、KX85が弾んでいく。

走り出すまで「うまく走れない」と涙を流していたはずなのに・・・先生のCRF150RⅡを交わしたのは、ほとんど走るマシンのいない、きれいなインサイドだった。先生よりも小さな背中を先生と同じように丸めて、シートのやや後ろに腰を落とすと、教え子が前に出た。YZ125のフロントがフープスに正対する頃にはもう、2台はつながるようにして第4コーナーを抜けていた。

このまま近づいてくると思われたCRF150RⅡ。でも、先生の今日は、まだ終わらなかった。

<つづく>

プロフィール

ナノハナ274

Author:ナノハナ274
ただいまモトクロスに夢中!

最近のTEAMナノハナ

週末のプラクティスは順延...
さすがに梅雨ですね。

<これからの予定>
6/17(日):MOTO-X981
6/23(土):MOTO-X981
6/30(土):MOTO-X981

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